メタスコアとは?信頼性・評価の仕組みとゲームレビューの正しい見方

ゲーム

皆さんは新しいゲームを選ぶ際、何を参考にされていますか?

テレビのCMやSNSで話題のタイトル?

友人からの口コミ?

あるいはゲーム雑誌やウェブサイトに掲載されているレビューでしょうか。

近年ゲームのリリース数は膨大になり、どのゲームをプレイするべきか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そんな中で、多くのゲーマーやゲーム関係者が注目する指標として「メタスコア」という言葉を耳にする機会が増えています。

このメタスコアは、一見するとゲームの面白さを客観的な数値で示してくれる便利なツールのように思えます。

しかし、その裏には複雑な仕組みや、一筋縄ではいかない業界の事情が隠されています。

今回はこのメタスコアの正体からその信頼性、そしてスコアの向こう側にある「本当の価値」を見抜くためのレビューの読み解き方まで、専門的な視点から詳しく解説していきます。

単なる数字に惑わされることなく、自分にとっての「名作」と出会うための羅針盤として、お役立ていただければ幸いです。

メタスコアの正体:権威あるスコアの仕組み

メタスコアとは何か?Metacriticの概要

メタスコアとは、米国のレビュー収集サイト「Metacritic(メタクリティック)」によって算出されるコンテンツの評価点です。

このウェブサイトは1999年に設立され、現在米国カリフォルニア州に本社を置くCBSInteractive社の傘下にあります。

Metacriticが扱うコンテンツはゲームに限定されず、映画、テレビ番組、音楽など多岐にわたります。

それぞれのジャンルについて、世界中の雑誌やウェブサイトに掲載されたレビューを集積し、その評価を100点満点で数値化。

それらの数値から「メタスコア」を算出しています。

ゲーム分野においては、世界的に最も注目される指標の一つとされており、ユーザーだけでなく多くのゲーム会社も参考にしていると言われています。

評価基準とスコア算出のブラックボックス

メタスコアの評価は、点数に応じて3段階の色分けがされており、視覚的に傾向を把握することができるようになっています。

緑色は高評価、黄色は平均的、赤色は低評価を示します。

スコア範囲評価
90点~100点最大評価
75点~89点高評価
50点~74点平均的
20点~49点低評価
0点~19点最低評価

このスコアは単純な平均点ではありません。

メタスコアの最大の特徴は、「加重平均」を採用している点です。

これは、レビューを投稿した媒体の影響度や重要度に応じて「重み付け」が行われることを意味しています。

例えば、ある批評家Bが80点、批評家Cが60点と評価したゲームがあったとします。

批評家Bの信頼度が1.5、批評家Cの信頼度が1と重み付けされた場合、そのゲームの加重平均スコアは(80×1.5+60×1)/(1.5+1)=72点と算出されます。

今のはあくまで例です。この「重み付け」の明確な内容は現段階では公表されていません。

この不透明性は、メタスコアが「権威ある指標」として機能する一方で、その算出根拠が不明瞭であるという構造的な問題を生み出しています。

加重平均の仕組みは、影響力のある批評家の評価をより強く反映させることで、スコアの信頼性を高めることを目的としていると考えられます。

一方で、このブラックボックス性が「なぜ特定の媒体のスコアに重みが違うのか」という疑念を生む可能性も指摘されています。

この透明性の欠如に対し、競合サイトである「OpenCritic」は、ユーザー自身が信頼するレビュー媒体を選択できる仕組みを導入することで、より透明性の高い評価システムを追求しています。

メタスコアがゲーム業界に与える絶大な影響力

メタスコアはゲームの売上だけでなく、ゲーム業界全体に絶大な影響力を持っています。

多くのパブリッシャーや投資家にとって、メタスコアは重要な投資判断の指標となっています。

高評価を得たタイトルには多額の資本が投下されやすく、また、インフルエンサーが取り上げる可能性も高まるため、売り上げや認知度向上に繋がると考えられています。

逆にメタスコアで評価が低い場合は、たとえ続編の製作予定があったとしても中止になることがあると言われています。

この権威性は、日本のゲームパブリッシャーの成功事例にも表れています。

カプコンは、2023年3月に発売し約1年間で700万本を記録した『バイオハザードRE:4』や『ストリートファイター6』といった高評価タイトルにより、Metacriticのゲームパブリッシャーランキングで2019年から2度目の1位を獲得しました。

また、2024年のランキングでもセガが1位、カプコンが2位となり、日本企業が僅差で競い合う様相が示されています。

このようにメタスコアが開発会社の評価や株価、ひいては開発者のボーナスにまで直結するという事実は、クリエイティブな側面にも大きな影響を及ぼしていると考えられます。

開発チームはより高いメタスコアを目指すため、批評家が評価しやすい「完成度」「革新性」「技術力」といった要素に注力する傾向が強まる可能性があります。

しかし、このことは、革新的ながらも評価が分かれるような「尖った」ゲームや、批評家からは理解されにくいが一部のユーザーには熱狂的に支持されるような「ニッチな」ゲームが生まれにくくなるというリスクも内包しています。

つまりメタスコアがゲーム開発の「安全志向」を促し、業界全体の多様性を阻害する可能性も否定できないのです。

メタスコアは本当に信頼できるのか?:光と影の考察

メタスコアが信頼される理由:プロの目線

メタスコアは、客観的かつ良質なレビューが多いことから信頼性が高いとされています。

その理由は、Metacriticにレビューを投稿しているのが、著名な評論家やゲームメディアであるためです。

彼らが書くレビューは、グラフィックやゲームデザインだけでなく、動作の重さやメニュー画面のわかりやすさなど、多岐にわたる観点から徹底的に分析されています。

プロの視点から書かれたレビューは、個人の感情やプロモーションに左右されにくく、公平な評価が期待できるため、多くのユーザーが参考にしています。

「批評家」と「ユーザー」の埋まらない溝

Metacriticのゲームページには、「メタスコア(批評家レビュー)」と、誰でも投稿できる「ユーザースコア」が併記されています。

しかし、これら二つのスコアが大きく乖離することが多々あります。

これは、批評家とユーザーがゲームを評価する際に、異なる評価軸を持っているためです。

批評家レビューユーザーレビュー
評価軸完成度、革新性、技術面、ゲームデザインといった世界的な基準を重視。実際のプレイ体験、個人的な感情、没入感、長期プレイ後の満足度などが重視される。
評価時期発売直後の短期間でのレビューが中心。長期プレイやアップデートを踏まえた意見も多い。

批評家はゲームを「芸術作品」「技術の結晶」として評価する傾向があるのに対し、ユーザーは純粋な「娯楽」として「楽しかったか」「面白かったか」を重視する傾向があります。

この評価軸の違いこそが、スコアの乖離の根本原因です。

例えば「技術的には素晴らしいが、物語が難解でプレイヤーを選ぶ」ゲームは、批評家からは高評価を得る一方で、ユーザーからは「面白くない」と評価されるかもしれません。

このギャップを理解することが、スコアを正しく読み解く第一歩となります。

ユーザーレビューの闇:「レビュー爆撃」の正体

ユーザーレビューの信頼性を著しく損なう現象として、「レビュー爆撃」があります。

これは、特定のゲームが短期間に大量の低評価レビューで埋め尽くされる現象です。

この爆撃が発生すると、ゲームの「中身」そのものの評価が埋没し、本当にそのゲームが面白いのかどうかが分からなくなってしまいます。

レビュー爆撃の理由はさまざまです。

ゲーム自体の問題(バグだらけのリリース、ユーザーを軽視した運営対応)もあれば、ゲーム外の要因(政治的・社会的な炎上、開発者やパブリッシャーの不祥事)が原因となることもあります。

具体的な事例としては、以下のものが挙げられます。

  • 『Fallout4』:ベセスダズ・クリエーション・クラブの実装に対する抗議としてレビュー爆撃を受けた。
  • 『MaddenNFL21』:EAスポーツがゲームにごくわずかなアップデートしか行わないことを批判するプレイヤーによって低評価を受けた。
  • 『デス・ストランディング』:PC版リリースに合わせ、Metacriticで悪評爆撃の被害にあったが現在はその投稿が排除されている。

レビュー爆撃は単にスコアを下げるだけでなく、そのゲームの評判を長期的に傷つけ、新作や続編の売上にまで悪影響を及ぼす可能性があります。

これに対しSteamのようなプラットフォームは、レビューの評価が時間経過でどのように変化したかを示すヒストグラムを追加したり、爆撃期間のレビューを評価から除外するシステムを導入するなど、対抗策を講じています。

このような対応は、レビュー爆撃が単なるユーザーの不満表現に留まらず、業界のレビューシステム自体を変化させるほどの力を持っていることを示唆しています。

また、開発者のファンが報復的に高評価レビューを大量に投稿する「逆レビュー爆撃」という現象も発生していることも確認されています。

正しいゲームレビューの読み方:自分にとっての「名作」を見つけるヒント

スコアは入り口、レビュー本文こそが宝の山

メタスコアは、世界的な動向を知る上で非常に有用な指標ですが、そのスコアはあくまで「大まかな傾向」を示すに過ぎません。

たとえメタスコアが高くても、自分の好みに合わない可能性は十分にあります。

本当にそのゲームが自分に合っているかを知るには、スコアの裏にある「個別のレビュー本文」を読み込むことが不可欠です。

レビューから読み取るべきポイントは以下の通りです。

  • 具体性:「面白かった」の一言ではなく、「何が、どう面白かったのか」を具体的に説明しているかを確認します。ストーリー、ゲームプレイ、グラフィック、サウンドなど、どの要素に言及しているかを読み解くことで、ゲームの魅力がより深く理解できます。
  • 長所と短所:良い点だけでなく、悪い点にも触れているか。良いレビューは、両方の側面を公平に評価し、読者が全体像を把握できるように作られています。良い部分だけを強調するレビューは、読者の誤解を招く可能性があります。
  • レビューの属人性:プレイ時間、使用したデバイス、難易度設定、そしてレビュアーのゲーム歴や好みのジャンルなど、レビューに現れる「属人性」にも注目します。例えば、アクションゲームが得意なレビュアーが「簡単だった」と書いていても、それが一般的な難易度ではない可能性も考慮する必要があります。

海外と日本のレビューサイト比較:それぞれの特徴を知る

ゲームレビューサイトは、それぞれ独自の評価システムや思想を持っています。

海外の主要サイトと日本のサイトを比較することで、それぞれのレビューが持つ特徴をより深く理解することができます。

サイト名特徴評価方法
Metacritic海外の動向を知るのに最適。ゲーム業界への影響力が非常に大きい。批評家レビュー(加重平均)と、誰でも投稿できるユーザースコアが存在。
OpenCriticMetacriticの競合サイト。より透明性の高い評価システムを追求。批評家レビュー(単純平均)。ユーザーは信頼できる媒体を自分で選択できる。
ファミ通日本の代表的なゲーム雑誌。独自の「クロスレビュー」が有名。4人のレビュアーが10点満点で評価し、合計点で「殿堂入り」を決める。ただし、発売直後のレビューである点に注意が必要。
4Gamerなど国内の有名ゲームメディア。ユーザーレビューの募集・掲載も行っている。ライターの名前が明記され、信頼性のある記事が多い。サイトによってユーザーレビューの有無や評価方法に特徴がある。

各レビューサイトは、その評価システムに独自の「思想」を反映させています。

Metacriticが特定の媒体に「重み」を置くのは、それが「権威」であると見なしているからです。

一方、OpenCriticはユーザーの「信頼」を軸に据えています。

ファミ通のクロスレビューは、複数の専門家の意見を一つの評価に集約するという、日本独自の文化を反映しています。

この「思想」を理解することで、なぜ同じゲームでもサイトによって評価が異なるのか、その理由が見えてきます。

そして、どのサイトの「思想」が自分の価値観に近いかを知ることで、より信頼できる情報源を選び取ることができるようになります。

結論:ゲームとの良い付き合い方

メタスコアは、世界的なゲーム業界の動向を知る上で非常に有用な指標であり、プロの批評家の視点からゲームの完成度を測る優れたツールです。

特定のゲームに多額の資本が投下される際の判断基準になったり、開発チームの評価を測る指標となったりするなど、その影響力は計り知れません。

しかし、そのスコアはあくまで「参考の一つ」に過ぎません。

特に、批評家の評価軸と自分の好みが合わないこともありますし、ユーザーレビューには「レビュー爆撃」というノイズも存在します。

海外基準での評価となるため、日本のユーザーの感性とは乖離が生じる可能性も指摘されています。

最終的には、スコアや他人の評価に流されず、自分の感性を信じることが最も大切です。

様々なレビューを参考にし、なぜ高評価なのか、なぜ低評価なのかを自分なりに分析することで、ゲームをより深く、多角的に楽しむことができるようになります。

読者の皆様が新たな「名作」と出会うための助けとなれば幸いです。

よった

大阪の北摂地域に住む30代サラリーマン。 2人の育児に悪戦苦闘しながらも日々楽しく過ごしています。 日常での出来事や役に立ちそうなことを細々投稿していきます。

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